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もの作ることで幸せをいただいて、さらさらと暮らしたい

東北へ(盛岡編) 

 まずは岩手県盛岡市。盛岡への到着は早朝4時となり、睡眠と朝食を済まし10時ごろからノソノソと盛岡市街へと向う。
 先に残念な報告をしておきますと、写真を撮ったフィルムが3本だと思ってたところ、撮ったフィルムをもう一度セットして撮影してたことが判明し。実質、正常に撮れているのは最初にとった一本だけとなりました…。フィルムセットした時のフィルムの折れ曲がり方とかで気付きそうなもんだけど、去年はほとんどフィルムカメラを触らなかったせいか、気付かなかった…。なんかおかしいなと思ってたらこういうことだったのかと。非常に残念な気持ちですが。なんだかんだでおもしろい写真もあって、しゃーないという気持ちで一杯です。

 朝から宮伸穂先生の釜定のお店へとお邪魔する。釜定は明治から三代続くお店で鉄鋳物で茶釜からフライパン、鍋、アクセサリーまで様々な商品を販売しています。麻布にあるdesignshopにて釜定の商品を取り扱っているようです。宮先生のプロフィールもありました。(http://www.mh-unit.com/designshop/designers/miya.html

 宮先生は金沢美術工芸大学のOBであり、去年から鋳物の惣型という造型法の集中講義で講師をして頂いている。卒業制作が実家で作った鉄鋳物のフライパンという逸話があり。そのフライパンはいまでも釜定の定番商品として売られています。

 僕は最近、明かりに興味があって和蝋燭を集めている。これは和蝋燭を立てるもので、蝋燭の台の部分が常に水平に保たれるよう回転する仕組みになっており、机の上に置いたり、壁にかけたり、室内を手で持ち運びながら使うデザインとなっている。うーん、ほしい、作りたい。

 灰皿やキーホルダーも売ってる。シンプルなデザインに漆焼付けによる黒が冴える。お店は奥さんが切盛りし、宮先生を筆頭に4人の職人がお店の奥の工房で製品を作っている。

 伝統的な鋳物場には必ず土間がある。そこの土で金属を流し込む型を作るのだ。型に使った土は半永久的に再利用でき(だんだん細かくなっていく)、製造コストなどを考えると経済的に効率はよくはないが、ゴミも出ず、営みとしてもっとも環境にやさしい、もっとも効率的な鋳造技法だといえる。歴史を感じる年季の入った工房はかっこいい。

 金属を流し込んで型から取り出したばかりの鋳物たち。愛らしい狛犬の置物。そういえばこれはお店には置いてなかったな。欲しかった。

 盛岡という街は山々に囲まれ、豊かな水、釜定をはじめ昔からつづくお店が未だに多く残っている。地方都市だというのに寂れた印象はまったくなく、若者も多い。この日はありがたいことに宮先生の書斎に泊めていただけることになり、(この旅では基本車中泊)のびのびと足と背中を伸ばして寝ることができました。お昼には盛岡名物じゃじゃめんチータンタンを頂き。夕食には学生には手の届かない焼肉屋でご馳走していただきました…。盛岡を出るときに地元の日本酒までおみやげに頂き、至れり尽くせりで。頭が上がりませんでした。

 釜定の他に市街をいろいろと見て回ると面白い店がたくさんあります。今回の旅では全部見切れなかったので、またいつか盛岡へ行かなくてはなりません。町の風景は至って自然で、目にうるさい看板などあまり見られず、冬には寒さと雪がきびしい土地ではありますが、人の住みよい街だと思いました。

 泊めて頂いた次の朝は早朝に目が覚め、城跡や川沿いなどを散歩しました。川には鮭、鮎、白鳥と様々な動物がやってきます。僕らが盛岡を訪れたときは白鳥がいました。川沿いをぶらぶら散歩し、橋を渡ると箒を持ったおばさんが橋をそうじしていました。この街が気持ちよいのはこういった人たちのおかげでもあるんだなと思い、見習って川沿いをゴミを拾いながら歩いていると、拾ったビニール袋の中が餌だと思ったのか、白鳥やカモたちがぞろぞろついてきます。一緒に散歩をしているような気分。いや、きっとそうです。そういうことにして、とても愉快でした。

 ある店先にいた看板ねこさん。お店の外から一番目立つところに特等席。気持ちよいだろうに。さらにクッションの生地がよい。

 正食普及委員会という興味深いお店の後に倉を改築した喫茶店があります。古くよい木材がふんだんに使われた内装と家具たち、やわらかい照明のなかとても落ち着いたところでした。丸太のような椅子は餅をつく臼を椅子に作り直したもの。いいなー。

 日本でも有数の民芸品店、光原社が盛岡にあります。豊富な品揃えに心がウキウキします。旅行中デジカメが不能になったので写真で紹介できず残念ですが、縦縞の海鼠釉が流れる湯呑みひとつと芹沢硑介デザインの風呂敷、照明具につかえそうな障子紙を買ってしまいました。よい物が見つからず、手に入らずにいた念願の風呂敷、本とか持ち運ぶ時に包んじゃいます。

 光原社の建物の瓦。美しい藍、これも海鼠釉かな。こんな屋根のお家に住みたい。

 盛岡は工芸技法が多く残る土地で、そのひとつ草紫堂という染物屋を訪れました。日本でも秋田県花輪とここだけにしか残らない紫根染という技法で名高いお店です。商品として年齢層は高く、値段的にも僕のような学生が買うようなものではないのですが、今もなお地元の女性達が手仕事で絞りの仕事をしているというのは驚きました。それだけに値段は高くなるのですが、丹念な手仕事によって創りだされる美しい文様が目を惹きます。お店にならんでるのはちょっと高級なお土産という感じであまり、いいものではなかったのですが。ディスプレイ用の商品は美しかったです。この紫根染は聖徳太子がもっとも高貴な色として位置づけた色としてでも有名で、化学染料以外、ここまで深みのある紫に染められる染料は紫根以外に無く。貴重な薬草から手間隙かけて作られる過程からも、色としての価値や美しさが伺えます。


 盛岡を出て、山形の途中にあります、平泉市の中尊寺を訪れました。国宝である金色堂があります。ただ、国宝となると保護のため様々な設備が必要になります。金色堂はコンクリート造りのお堂に覆われ、完全に外から隔離されています。その中保護のためやわらかい照明で展示されていました。これでは風情もへったくれもありません。

 昔、芭蕉が旅の途中に金色堂をみて詠った時のように自然な姿の金色堂をみてみたいものです。芭蕉もこれでは詩は詠えないでしょう。本堂や能楽堂のほうが魅力的でした。写真は能楽堂です。


 これで盛岡編はお終いです。次は山形へと参ります。もう少しお時間をください。


柳宗悦の「手仕事の日本」をちらちら読みながら旅してきたので、なんとなく文章もそれっぽくなってしまった。)