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もの作ることで幸せをいただいて、さらさらと暮らしたい

「生」「手作り」「天然」それってほんとにいい物?

 Tech-On!のコラムを読んでいて非常に分りやすい記事があったので紹介。
 自分自身手作りで物を作ることを学び、それを一つの強みとしている。他人事ではないし、この記事が言っていることを真摯に受け止め、自ら問うていかなくてはいけない。

天然疑惑 - 日経テクノロジーオンライン

 無知な生産者、特に僕らのような工芸家のひよっ子にとって、わからない事は非常に多い。例えば素材の成分。僕の学んでいる鋳金では金属、主に青銅(銅と錫等を含んだ合金)を使う。昔、銅の精錬技術が今ほど高くなかったころ、その銅にはヒ素が微量に含まれていた。ヒ素が含まれた銅の器に水を入れていたりすると、微量のヒ素が水に溶け出たりする。他に銅の錆である、緑青にもヒ素が含まれることになる。昔、緑青が毒だと言われたのも、そのヒ素が原因だったという。現在の精錬技術はヒ素はまったく混入しないようになっており、水道管などに使われるようになったわけです。そういうことが分って実証されていれば心配はいらないが。信頼できる業者から得た素材でないと安全かどうかは作者自身判断できない。他に素材で言えば木材でしょうか。その木材含まれた成分は?その木はどこでどのように育ったものなのか?加工されているなら殺虫剤や接着剤は安全か?陶磁器における土の成分も本当に安全なのか?土、釉薬には鉛、カドミウムを含むものがあり、食用として使用する場合、許容量を超えたものは危険であり違法です。でも素材だけが問題でもない、加工に使われる研磨剤、塗料様々な道具が使われます。研磨剤なら除去は確りしてあるか?塗料なら安全なものを使用しているか?と注意しなくてはいけません。
 工芸科は彫刻のように展示するためだけのものを作るのではありません。また、デザイン科のようにデザインだけを提案するのでもありません。工芸科は身に触れたり口に触れたりする生活道具も作り、デザインだけではなく素材から考え、そこから物を作ります。特に生活道具を作る場合は責任重大です。それゆえ生産者にとって無知でいることは罪でしかありません。Tech-On!の記事のように消費者側の無知を利用して商品を売るのも困ったものですが、踊らされている消費者も少々問題があるでしょう。